ワトソン本を読んだ

本は以下の通り。

IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる 

 

ワトソンとは

IBM 質問応答システム“ワトソン”がクイズ番組に挑戦! - Japan から引用させてもらいます。

 ワトソンは、質問応答技術の更なる向上を目的に、自然言語処理技術をさらに進化させることを目的に設計されました。「ジョパディ!」で出題されるバラエティーに富んだ複雑な問題に対して、100万冊の本を読むのに相当する自然言語で書かれた情報の断片を分析し、短時間で最も適した解答を導き出す分析コンピューティング・システムです。

 「ジョパディ!」は、歴史、文学から科学など幅広いジャンルを扱うクイズ番組として全米で親しまれています。出場者は短時間のうちに正確な解答を返すために、質問に含まれる微妙な意味、風刺や謎掛けなどの複雑な要素の分析をしなければなりません。本来、人間とは異なり、自然言語を正確に理解することのできないコンピューターにとっては大きな挑戦であり、質問応答技術の進歩に貢献できる格好のチャンスでもありました。

ワトソンは、システム設計と分析において技術を進歩させました。瞬時に複雑な質問文を解析して正しい解答を導かねばならないため、ワトソンのソフトウェアは、大量のタスクを処理できるよう最適化されたIBMのPOWER7サーバーで動作します。このシステムには、リアルタイムで情報を分析しながら莫大な量の並列タスクとデータを処理するという特殊な要求を満たすため、独自の技術が数多く取り入れられています。ワトソンは、Linuxが稼働する「IBM Power 750サーバー」のラック10本分、総メモリー容量15TB、総プロセッサー・コア数は2,880個で構成されており、インターネットには接続されていない完全に自己完結したシステムです。

ワトソンの研究開発プロジェクトは、非構造データ分析、自然言語処理、ワークロード最適化システムの設計分野におけるテクノロジーを前進させました。ワトソンを支える技術は、今後より迅速で正確な医療診断支援、潜在的な薬物間相互作用の検査、弁護士や裁判官による過去の判例の参照、金融分野の仮説シナリオと法令順守など、さまざまな分野への応用が期待されています。

 

 本で面白かった点について

一番おもしろかったのは、第7章 人工知能研究の現状とゆくえ でした。

以下、書かれていたことをピックアップして紹介します。

 

人工知能は、科学の多くの分野同様、はるか昔に実用主義と理想主義の2陣営に分かれ、今日に至っているらしいです。

理想主義から見れば、ワトソンは所詮統計分析マシンで、限界がある。

AIには「考え、知り、学ぶ」マシンを開発するという輝くような夢があり、ワトソンはそれには当てはまらない。

いろいろな意味でワトソンは知能が低い。統計データを巧みに扱えるだけで、実質、何も知らない。

そんな欠点だらけのワトソンが、もし、効果的で万能の知識マシンであると評価されてしまったら、これはもう別路線を行くAI技術の終焉を意味しかねない。

そんな声が出てきていたようです。 

 

しかしながら、理想を実現するためには、かなりの年月が必要になってしまうとアポロ計画と比較しながら紹介されています。

ケネディ大統領がアポロ計画を宣言したとき、既に基本的な科学研究はほぼ全て出揃っていて、あとは必要なあれこれを寄せ集めて、適切な規模に拡大し、宇宙性を組み立てて空に打ち上げるだけでよかった。

それに比べると、AI研究はガリレオの時代であり、まだニュートンまで行っていない。

大きな目標である人間の思考のリバースエンジニアリングとなると、まだまだ膨大な時間と努力が必要になる。

だからこそ、ワトソンは現実路線をいくしかなかった、とされています。

 

この現実路線を行く例としてGoogleが挙げられています。

2005年に行われた機械翻訳のコンテストで、アラビア語や中国語の専門家が一人もいないGoogleが他を圧倒した。

「言語のニュアンスなど忘れろ、すべてを数学でやれ。」

そんな潮流が生まれた、と。

私は現在ではそれが主流になっているように感じます。

言語のニュアンスなど忘れろは言い過ぎかもしれませんが、現在の自然言語処理のトップカンファレンスでは統計の知識が不必要な論文はほとんどありません。

それだけ統計が大事にな要素になってきています。

 

しかし、これはジレンマであるとの忠告がなされています。

この潮流はAIの理想からは離れてしまう。なぜなら、マシンは本質的に無知のままだからです。

映画に出てくるようなAIが登場するのはいつになるのか… すぐには難しそうですね…

 

まとめ

人工知能の研究をする人は、読んで損のない内容になっています。

ぜひ読んでください!ためになりました!!